儒学のすすめ
論語 現代語訳大全

04-05 『得るか失うかではなく、正しいかで判断する』

現代語訳

お師匠様が言われました。「富や地位は誰もが望むものでありますが、正しい方法によって得たものでなければ、それにとどまることはしません。(正しい人は、正しい理由でない富であれば、そこから抜け出そうとします。)反対に、貧しさや低い身分は誰もが嫌うものでありますが、正しい理由によるものでなければ、それを受け入れ続けることはしません。(正しい人は、正しい理由でない貧しさであれば、そこから抜け出そうとします。)君子は、仁徳を捨ててしまっては、どこに名誉をまっとうできましょうか。君子は、食事をする間にも仁から離れることはなく、あわただしい時でも、ひっくりかえりそうな大変なことが起きても、仁から離れず必ずそこにいます。」

現代への応用(☑表示)

現代社会では、成果や結果が強く求められる一方で、その過程や手段が軽視されがちな場面も少なくありません。収入の多さや地位の高さが評価の基準となりやすく、「どうやってそこに至ったか」が見えにくくなることがあるのではないでしょうか。

しかし孔子は、得た結果そのものではなく、それに至るまでの道筋が正しいかどうかを重視しています。たとえ富や成功を手にしても、それが正しい方法によるものでなければ、その状態に安住するべきではないと考えます。反対に、困難な状況にあっても、それが正しい在り方の中で生じたものであれば、安易にそこから逃れるべきではないと示しています。

さらに重要なのは、こうした判断の基準が一時的なものではなく、日常のあらゆる場面において一貫している点です。忙しいときや予期せぬ出来事に直面したときほど、人は本来の基準を見失いやすくなりますが、君子はどのような状況でも仁を手放さないと説きます。

現代においても、長く信頼される人や組織は、結果だけでなく、その過程の正しさを大切にしています。この章は、何を得たかではなく、どのように得たか、そしてどのような状況でも自分の基準を守れるかが、真の価値を決めることを示していると言えるでしょう。

原文・書き下し文(☑表示)

子曰。いわく。
富與貴、とみくみするたっときとは、
是人之所欲也、ひとほっするところなりも、
不以其道得之、みちもっこれとも、
不處也。らざるなり。
貧與賤、ひんくみするせんは、
是人之所惡也、ひとにくところなりも、
不以其道得之、みちもっこれとも、
不去也。らざるなり。
君子去仁、君子くんしじんりて、
惡乎成名。いずくにかさん。
君子無終食之間違仁、君子くんしむのかんおえるにじんたがうことく、
造次必於是、いたつぎかならここおいてし、
巓沛必於是。くつがえたおれるにかならここおいてす。
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