03-08 『礼は内面の上に成立する外的秩序である』
現代語訳
子夏が問い言われました。「詩経に"巧みに笑い、えくぼが美しく、目もとが輝き、その上に白が加わる"とありますが、これは何を意味するのですか?」お師匠様が言われました。「絵を描くときには、まず白い下地があって、その上に彩色するものです。」子夏が言われました。「礼とはその“彩色”のようなものですね。」お師匠様が言われました。「(あなたは、良く本質を理解していますね。)私を啓発してくれる人は、(子夏:)商ですよ。これから詩経をいっしょに語り合えますね。」
登場人物
- 子夏 … 孔子の弟子。孔門十哲の一人。名は商。
- お師匠様 … 孔子本人。名は丘、字は仲尼。
現代への応用(☑表示)
現代社会では、見た目の印象や振る舞いの整いが重視される場面が多くあります。しかし、その外面的な美しさや礼儀が本当に価値を持つためには、その土台となる内面が伴っていなければならないものと、この章では示しています。例えば、丁寧な言葉遣いや洗練された態度を身につけていたとしても、その人の内側に誠実さや思いやりが欠けていれば、それはどこか表面的で薄い印象を与えてしまうものではないでしょうか。逆に、内面にしっかりとした価値観や真心が備わっていれば、多少形式が不完全であっても、その人の魅力や信頼は自然と伝わるものです。孔子がここで示しているのは、礼とは最初に身につけるべきものではなく、内面が整った後に初めて意味を持つという考え方です。礼はあくまで表現であり、その本質は人の内側にあるものに支えられていると示しています。現代においても、外見や形式を先に整えることに意識を向けるのではなく、まずは自分の内面を磨くことが大切ではないでしょうか。その上で礼や振る舞いが備わることで、はじめてそれは自然で調和のとれたものとなります。形から入るのではなく、内側から整えていく姿勢こそが、人としての深みや信頼を生み出す鍵となるでしょう。
原文・書き下し文(☑表示)
| 子夏問曰。 | 子夏問いて曰く、 |
| 巧笑倩兮、 | 巧みなる笑みは倩しきたり、 |
| 美目盼兮、 | 美しき目は盼たり、 |
| 素以爲絢兮。 | 素以て絢を為すたりとは、 |
| 何謂也。 | 何の謂いぞや。 |
| 子曰。 | 子曰く、 |
| 繪事後素。 | 事を絵くは素の後にす。 |
| 曰。 | 曰く、 |
| 禮後乎。 | 礼は後なるか。 |
| 子曰。 | 子曰く。 |
| 起予者商也。 | 予を起す者は商なり。 |
| 始可與言詩已矣。 | 始めて与に詩を言う可きのみ。 |
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